- 指で押すと指の跡がつきます。夕方になると悪化しますが、一晩寝て朝起きると軽くなっています。部分的にむくんでおり、人によってその部位は様々です。足の場合は足の付け根や太ももの内側から、腕の場合は上腕の内側からはじまること多いようです。ぴりぴり感や重だるさなどの違和感を感じるようになります。
- 硬くなり指で押しても凹みません。早期のリンパ浮腫と同様、夕方に悪化し、張りつめるような感覚があり、一晩寝ても浮腫があまり戻りません。この時期になると、リンパ浮腫による手足の太さの左右差が目立ってきます。程度の差はあっても、手足の全体がむくんでいることが多く、さらに部分的なざらざら、赤味、多毛などの症状が見られるようになります。
- 肌がざらざらする、赤くなる、繰り返し熱が出る(蜂窩織炎)、汁が出る(リンパ漏)、などの症状がみられます。この頃には、日常生活への支障が大きくなります。
タンパク質や白血球を主な成分とするリンパ液が皮下に長く溜まると、次第に皮膚や皮下脂肪を傷めてしまいます。そのため、ほかの種類の浮腫には見られない特徴があります。
早期のリンパ浮腫の場合、皮下脂肪の隙間にリンパ液が溜まっているだけで、脂肪は正常なままなので指で押すと凹みます。
進行してリンパ液の作用により皮下脂肪が炎症を起こすと、コラーゲンの線維ができて真皮が厚くなり、
皮下脂肪も蜂の巣のようになって硬くなります。こうなると、指で押しても凹みません。
リンパ管は何本もあり、リンパ浮腫になっても一度にすべて傷んでしまうわけではありません。
リンパ浮腫の早期で、正常なリンパ管が残っている場合は、日中のうちに重力で悪化しても、横になっている夜の間に、残っているリンパ管にリンパ液が流れて浮腫が改善すると考えられます。中期以降のリンパ浮腫では、残された正常なリンパ管が少なくなるので、横になってもなかなか改善しません。
中期以降のリンパ浮腫(右)では、リンパ管が途絶えているため浮腫が取れにくい。
リンパ浮腫の症状でもっとも厄介なのが蜂窩織炎(ほうかしきえん)です。
皮下にたまったリンパ液が炎症反応を引き起こし、赤味や痛み、熱を発します。
赤味の症状は様々で、ぽつぽつができたり、地図のようになったりするほか、毛穴に膿をもつこともあります。
リンパ管に沿って炎症が起きるのは、リンパ管炎です。血流にのって炎症物質が全身に運ばれると、全身の熱が上がります。蜂窩織炎を起こしていると浮腫も悪化します。
細菌による感染がもとになっていると考えられ、抗生物質の内服のほか、冷却や安静にすることも必要です。
治療によって赤味や熱感は1~2週間で落ち着くことが多いですが、その後数カ月にわたり浮腫の悪化した状態が持続することがあります。
- 太ももの初期の蜂窩織炎。
赤いぼつぼつができて肌荒れのようにみえる。
熱感やぴりぴり感など痛みを伴う。 - 太ももの蜂窩織炎。
地図状の赤い斑が出ている。 - 内ももの蜂窩織炎。
毛穴に膿が溜まって毛嚢炎をおこしている。
抗生物質の点滴治療が必要。
リンパ浮腫を発症しても、長く放置しない限りすぐに象皮症なることはありません。まずは正しい治療を早期のうちに開始して、酷い浮腫になるのを防ぎましょう。
リンパ浮腫後期の象皮症の皮膚。
非常に硬く、ごわごわ、ざらざらしている。